陽と月との間で―明日をのぞむ―

私の物語と私の考えたことを私なりの言葉で紡ぎます。

SMの名言

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画像はイメージです

 昔、それもかなり昔の話です。友人の友人の、そのまた友人の・・・・・・というよくあるパターンで、一人の年上女性と知り合いました。その女性は自ら「SM大好き」を公言する女性でした。鼻筋の通ったクールビューティーで、日頃は男性の部下を顎でこき使うバリバリの働きたガール(ちょっと古いですね)でした。

 私は当然「バリバリのSなんだろうな」と思っていましたが、実際はまったく反対で「筋金入りのドM」だと言っていました。

 では、どれぐらい「ドM」なのか。それはもう私のような〃見かけ倒し〃とは異なり、文章に表すこともためらわれるほどの領域でした。

 もしも私が同じ事をされたら、恐怖と苦痛のあまり気を失うか、「いっそ殺してくれ~」と泣きわめくか。それほどハードな内容を、こともなげに話します。

 挙げ句の果てには「ほら!昨日も楽しんだよ!」とタイトなミニを少しめくると、そこには青とも紫とも、または赤茶とも判別しがたい内出血のような地図が広がっているのでした。

 

 「姉さん!体を大切にして下さい!」

(私はその日とを『姉さん』と呼んでいました)

叫びたくなる気持ちをぐっとこらえて、彼女の問わず語りに耳を傾けます。

 

 「痛いよ。痛みは他の人と一緒だよ。でもね、なぜかそこに生きてる~っていう気持ちがこみ上げてきて気持ちよくなるんだよね~」

 「自分の小ささや弱さ、ダメな所をそのままさらけ出して、それを誰かに叱ってもらえる。そんな心地よさかなあ」

 

 きっと私は怯えた目をしていたのでしょう。彼女はにっこり微笑み言いました。

 

「大丈夫!私だってこれだけは譲れないっていう掟があるから」

「掟?どんな掟ですか?」

 

すると彼女は急に背筋を伸ばし、真っ赤な口紅の艶めいた唇をゆっくり開きました。

 

「SMってね、『何をするか』じゃないの。『誰とするか』なのよ」

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 私は今でもこのときの彼女を鮮明に覚えています。

「何をするか」ではなくて「誰とするか」。

 セックスに正解はありません。変態もアブノーマルもありません。

もしも当人がそれを楽しんで受け入れているならば。

当人の寄り深いつながりのためのものならば。

そして他の人に迷惑をかけていなければ。

 

 私のような素人はSMの内容の過激さに目を奪われ、そこに至るまでの二人の心に思いを馳せることはありませんでした。けれど本当に大切なことは内容ではなく、対象との心の交流です。そこが満たされているならば、後は「二人の世界」なのでしょう。

 

「何をするか」ではなくて「誰とするか」

これって、SMだけではなくいろいろなことに当てはまりそうです。

 

 彼女も今では還暦に手の届きそうな熟女。さり気なく尋ねたら

「馬鹿じゃないの?私も旦那ももうそんな気力はないわよ!今は極普通のセックスばかりよ」とこともなげに話してくれました。

 

さすが!姉さん!

今でもカッコいいっす!