陽と月との間で―明日をのぞむ―

私の物語と私の考えたことを私なりの言葉で紡ぎます。

「卒業」  ―人間の叡智―

今週のお題「卒業」

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写真はイメージです

 

 

 はじめまして。この度「はてなブログ」に参入したのぞむと申します。ブログ歴はそれなりにありますが、はてなブログにおいては新参者です。宜しくお願いします。お題ブログのシステム、とても面白い試みですね。自分もちょっと挑戦してみたくなりました。文章がまとまればよいのですが・・・。

 

 今週のお題は「卒業」。私がこの言葉を聞く度に思うこと。それは人間の偉大さについてです。「卒業」は人が創り出した様々な営みの中でも、特別に奥深い叡智を湛えた機能ではないかとすら感じます。

 

 話が脱線するのですが、「時間」とは一体何でしょうか?

 一般的に私たちがイメージする時間とは〃直線・無限・連続〃だと思います。水道の蛇口からツー…と流れる細い細い一筋の水脈。あるいはどこまでまっすぐな緩い坂道を転がり続ける空き缶。二度と元には戻らない、そしていつまでも、本当にいつまでも終わりなく続く〃流れ〃。「時間」をこんなイメージで捉える人も多いと思います。

 

 そして、この「直線・無限・連続」は、たまに私たち人間を苦しめることがあります。例えば、こんなふうに……。

 

(その1)勉強を疎かにしていた太郎君。「うーん、まずいなあ」と思いつつ、今日もダラダラ。一昨日も怠けた。昨日もサボった。たとえ今日頑張っても、今まで何もしなかった自分を思うとやる気が出ない…。

(その2)失恋した花子さん。どこに行っても、何をしても、すぐに好きだった彼を思い出し涙が溢れる。笑い転げた去年が、肩を並べた先月が、触れ合ったあの日が、今は花子さんに痛みだけを与えている…。

(その3)若い頃、自身の至らなさから人を傷つけた。親になった今だからわかる。あのときの自分の弱さ、未熟さ、卑小さを。のぞむ君は傷つけた人の今を想い、夜も眠れなくなるときがある…。

 

 人は「時間」が持つ、どこまでも真っ直ぐに続く現実にたじろぎます。絶対的な不可逆性、途方もない連続性と無限性に声を失います。幼いころの傷、昔の過ち、過去の記憶。イマを生きようとする自分に対してブレーキを掛け、推進力を奪い、立ち止まらせてしまう負の力を、「時間」は持っています。「時間」にはもちろん、楽しい思い出・嬉しい記憶・輝かしい過去といった正の力もありますが、人はときに正よりも負に目が向いてしまうものです。

 

 抗いがたい「時間」の力。恐ろしいほどの「時間」の呪縛。私たち人間に為す術はないのでしょうか。いたずらに「時間」に打ちのめされるだけなのでしょうか。

 

 勘の良い方はもうおわかりだと思います。

 私たち人間は、時間を断ち切る方法を編み出しました。それが「儀式」です。入学式、卒業式、成人式、結婚式……。私たちは切れ目のない連続体としての「時間」にくさびを打ち込み、〃節目〃を刻むことで自らの心と体を一新しようと考えました。日付、曜日、季節、元号、世紀。これらの自動的な刻みと共に「儀式」を埋め込むことで、人は体よりもむしろ心に刻みやけじめを創り出し、自身を新しくすることが出来るようになったのですね。

 

 もちろん「入学」「成人」「入社」など、入り口の設定によって心を新たにすることも重要です。しかし「卒業」だけは少し異なる意味を持ちます。それはやはり「過去」「昔」からの決別です。良いことと悪いこと。喜びと悲しみ。笑顔と涙。それらをひとまず「思い出BOX」に詰め込んで丁寧に蓋を閉める。それをそっと心の片隅に整理したなら、さあ!新しい扉を開けて行こう!身体的に何も変わらないはずの自分、日々の暮らしの中で変化の見えない私に向かって〃一つの時代が終わったよ〃と語りかける。自らを認め、受け入れ、そして慈しむ。そんな大切な要素が「卒業」には詰まっている気がします。

 

 「卒業」。やっぱりこの言葉には、そしてこの営みには、何度でも新しくやり直すことの出来る私たち人間の可能性を感じます。過去を思い出としてきちんと区切り、未来を見すえて新しい一歩を踏み出すための深い智恵が、この言葉と儀式に込められている気がするのです。

 

 三月もそろそろ終わり。

 

 学校を卒業する人

 職場を卒業する人

 

 地域を卒業する人

 仕事を卒業する人

 

 親を卒業する人

 子育てを卒業する人

 

 恋人を卒業する人

 夫婦を卒業する人

 

 


どの「卒業」も、新しい未来のために用意された「区切りの営み」として大切なものだと思います。みなさんはどの「卒業」を迎えますか?どんな卒業であっても、私は手をぶんぶん振りながら、大声で叫びます

 

「ご卒業!おめでとうございま~す!!」