陽と月との間で―明日をのぞむ―

私の物語と私の考えたことを私なりの言葉で紡ぎます。

お気に入りの飲み物=お気に入りの「カップ」に入れた飲み物

今週のお題「お気に入りの飲み物」

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画像はイメージです

 もしかするとお題から少しズレるかもしれませんが、私のお気に入りの飲み物は「自分が初めて働いたお金で買ったマイカップに入れた飲み物」でした。

 居場所がなくて辛く苦しい家を逃げるように家を飛び出した19の春。大学の学費も生活費も自力で稼がなくてはならない貧しい生活でした。それでも生まれて始めて親の目を気にすることなく呼吸をし、親の一挙手一投足に神経を尖らせることなく眠ることができる時間は、何物にも代えがたいものでした。

 飛び込んでは断られ、それでも生きるために必死に探し回ったバイト。やっと拾ってくださった酒屋の親父さんのもとで、力のない私が一生懸命運んだビールケースの山。転んで瓶を割り、手を大きく切ったときも親父さんにはそれを隠したまま、怒鳴られましたっけ。それでも呆れずに私を雇い続けてくれた親父さん。亡くなった今でもときどき思い出しては手を合わせたい気持ちになります。

 そして、初めてもらったバイト代で買ったのが自分だけのカップ。とりたてて特徴のない素焼きのカップです。なぜか素焼きは小さい頃からの憧れでした。そして親父さんの酒屋さんで買った大好きな不二家ネクターを買い、ボロいアパートでカップに注いだ時間は、今でもスローモーションのように瞼の裏で再現できます。

 それ以来、このカップに注がれてきた幾多の液体。そのどれもが美味しく、楽しく、そして夢と勇気を与えてくれました。だから、私にとってのお気に入りの飲み物はやっぱりあのとき買ったカップに注ぐ飲み物たちと言いたい気持ちです。

 

 えっ?そのカップはどうしたかって?

 長い間大事に使い続けていましたが、私の娘がふとしたことで割ってしまいました。でも、それをきっかけに今度は娘たちとおそろいのカップを買ったので、また新しい思い出を作れることになりそうです。